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うんこなまずの巣

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2015年 03月 07日

心臓と膀胱を繋がれて、文字通り死ぬまで我慢する男の話(前編)

我慢している。
我慢。我慢。我慢。
人生は我慢だ。
ポケモンで最初にもらえる技マシンも「がまん」だ。
色々理不尽なことがあっても我慢するんだよっていう、開発者の大人たちからのメッセージだ。
部屋の掃除をしているお母さんが電源コードに引っかかってゲーム機がフリーズしたって、我慢しなきゃいけない。
なにしてんだこの野郎、なーんて言っちゃだめだ。タケシが泣くぞ。半裸で泣くぞ。ジムリーダーなのに半裸で泣くぞ。

夕日のガンマン。俺はハードボイルド。
腰にピストル携えて、今日も今日とて生きた痕跡残しに向かう。
今日という今日は、いや、、今という今は、もう我慢できない。
我慢の限界ってやつだ。
今日のターゲットは青い看板が目印のあの便利な店、コンビニエンスなストア。

の、トイレだ。

踏み出す一歩。また一歩。
歩みはやがて走りに変わり、風景はピントのずれた線画に変わる。
目的地はあと少し、この我慢もあと少し。
動き出すよ、君のもとへ。走れ。走れ。走れ。

悲しいかな、小学校ではかけっこ競技のスピードスターだった僕も、成長期という、神様が仕込んだDNAボムが爆発して小さい差異から大きい差異まで広げる時期に際して、常人のフォルダに振り分けられてしまっていた。
当然、理想の私が少し目の前を走っている、その背中を見つめる、ただの傍観者であるのだ。
カラータイマーが冷や汗を介して私に警告する。トイレにたどり着くのは無理だと。

最初は売り手市場だった排泄マーケットも、気づけばトイレの持ち駒のない状態にさしかかっていた。
OH SHIT。オーシッコ。この場合は城で言うところの天守閣、つまりパンツギリギリまで歩兵が迫っていた。

ああ、俺はここで、街のど真ん中で、俺が生まれ育ったこの街のど真ん中に、雨が降るまで消えないしるしを刻み込むんだなと思うと、「ダメよダメダメ、そんなパンチじゃ世界は獲れない」なんて妖精がささやいたりして。
神は言っている。ここで漏らす運命ではないと。

突如、耳に響いた奇妙な音。
それは、今か今かと誕生を待ちわびて体を丸めていた頃に、そんなときのことあまり覚えていないけれど、聞いていた音だった。

水音。

ピチョン。

一滴の雨は頬を叩いて、これから降りしきるであろうスコールを教えてくれる。

男は気づいた。砂漠に今宵、オアシスができる。
燃え行く本能寺で自害を決めた信長のように、バッグから取り出したペットボトルの蓋をひねり開け、男は最後の晩餐の、締めの葡萄酒を飲み終えた。

by unkonamazu | 2015-03-07 09:53


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